高齢世帯の侵入窃盗被害が増加
これは、侵入窃盗の被害に遭った方のうち65歳以上の方の割合を年ごとに比較したグラフです。
※警察庁「犯罪統計書」(2015年~2023年)をもとに作成
十年程前に比べると全国的な侵入被害件数は減少しています。
人々の防犯意識の高まりはもちろん、防犯効果の高い住宅資材の開発が進んだことや、防犯設備のIoT化により導入が容易になったことなどが影響しているようです。
しかし、過疎化の進んだ地域に住む高齢世帯が犯罪に巻き込まれるケースは増加傾向にあります。そういった報道が記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
離れて暮らす祖父母や両親がいるという方は、防犯意識や対策が手薄になっていないか今一度家族で取り組む課題の一つとして考えていきましょう。
最も簡単にできる対策は、防犯について考え話し合うことです。
高齢世帯の多い地域に住んでいるという方は、地域として取り組めることがないかも考えてみましょう。
進む高齢化
誰もが知っている通り日本は超高齢化社会へと進んでいます。高齢者とは65歳以上を差しますが、60代ではまだ若い印象があるほど、高齢の人口は増加しています。
内閣府の令和5年度版高齢者白書によると、65歳以上の高齢者を含む世帯は、全体の半数を超えました。現在の年代ごとの人口を加味すると、今後この割合は一層高まることが予想されています。
※内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」をもとに作成
さらに全体の三分の一は、高齢者のみで構成された世帯です。そのほとんどが、一人暮らしか夫婦二人のみで暮らしています。
核家族化に伴い、上の世代と同居することは少なくなりました。
現在もその傾向は続き、家族が世代ごとに暮らすことが当たり前になっています。その結果、二人以下の高齢世帯が増える結果となっているのです。
高齢世帯が狙われている
高齢者は侵入窃盗に限らず、詐欺、強盗などのターゲットになりやすい傾向があります。
とはいえ、高齢者そのものの人口が増えていけば、狙われる人数も増えるのは当たり前、とも言えますよね。
ところが、そうではありません。人口の増加数以上に、被害に遭う割合が増えているのです。
以下のグラフのように各年代ごとに比較すると、60代以降で急激に狙われる確率が上がっていることが分かります。
参考データ:本文中のグラフは以下をもとに作成
総務省統計局 人口推計(2015年~2023年)
警察庁 「犯罪統計書」(2015年~2023年)
高齢者の犯罪被害としては詐欺に注目が集まりがちですが、侵入窃盗についても近年、見過ごせない値になってきていると言えそうです。
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全人口に占める65歳以上の割合は2023年で見ると29.1%(総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)」より)です。
一方で、侵入窃盗で被害に遭った比率では37.9%と10ポイント近く高くなっていることが分かります。
では、なぜ高齢世帯は狙われるのでしょう。
高齢であることが弱点
理由の一つとして身体機能の低下が挙げられます。
侵入犯は入りやすく出やすい家を探しています。
入りやすい、という観点では、目や耳の能力が低下することは大きな障害になるでしょう。
目が悪くなってしまえば、近所に不審な人がいた場合にも判別できないかもしれません。知り合いだと思って見過ごした相手が、空き巣の下見だったということもあり得ます。
耳が遠くなることは、侵入の際に立てるわずかな音に気が付きにくくなるということでもあります。察知されないとなれば、在宅中であっても狙われる可能性が高くなるのです。
また、若い人に比べて、大きくはっきりとした声を出すことも難しくなっています。声を出して助けを呼ぶことや、急いで通報して相手に的確な情報を伝えることが困難な場合もあります。
さらに、腕力や脚力が落ちることも見過ごせません。犯人は、力の弱い高齢者なら力でねじ伏せられるだろう、と考えるかもしれません。また、急いで逃げれば追いかけては来られないだろう、とも考えるでしょう。
認知機能が低下している相手なら、正しく通報されないだろうという卑怯な考えで犯行に及ぶことも想定できます。
こう聞くと「自分はまだ体力もあるから大丈夫」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、ここで問題なのは「相手にどう認知されるか」という点です。実際の年齢や見た目も関係ありません。
〝あの家には高齢者が住んでいる〟もしくは〝昼間は高齢者しかいない〟ということだけでターゲットにされてしまうのです。
タンス預金に注意
もう一つの理由として、現金が置いてある可能性が高いことがあります。
若い年齢では外出の機会も多く、銀行やATMを訪れることはさほど難しくはないでしょう。
近年ではネットバンキングや電子決済も当たり前になったため、スマホさえあれば現金を見る機会などない、という方も多いかもしれません。
しかし、高齢者は違います。
銀行やATMへ出向くのが難しいこともあります。思い立っても、すぐに動けるとも限りません。
決済も現金で行っているなら、まとまった額を自宅に置いてあるということも多いのです。
そのことが「あの家なら簡単に現金を盗めるだろう」と思わせる原因になってしまっています。これも、実際に置いてあるかどうかではなく〝高齢の人が住んでいる=現金があるだろう〟と考えられ、狙われます。
自宅に現金を置いておく場合は、一つの場所にまとめることは危険です。いくつかに分散させておきましょう。
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弱い部分をカバーすること
高齢世帯の防犯対策では、基本の対策に併せて高齢者特有の弱さを補うことが重要です。
前述のように、事前に危険を察知する力や危険に直面した場合に対処する力は、年齢とともに低下してしまいます。
防犯用のセンサーやカメラは、危険を察知する手助けをしてくれます。異変があった場合に大きな音を出すシステムがあれば、自分も気が付けますし、周りへ報せる役割も担ってくれます。
緊急通報やブザーなどは、使いやすいものを選びましょう。これは高齢者に限ったことではありませんが、とっさの行動は簡単なものでなければ行えません。
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地域や家族構成で対策は異なる
都道府県別でみると、高齢世帯の割合が高い地域は人口密度の低い地域です。場所によっては住民のほとんどが高齢世帯であるということも起こっているのです。
一般的な認識では犯罪は少ないと思いがちですが、以下の記事にもあるように地方であっても注意が必要です。
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人口の少ない地域は要注意
特に、過疎化と高齢化が進んだ集落などでは、監視の目が極端に減っている場合があります。
少し前なら不審者への警戒ができていた地域でも、空き家や利用されなくなった農地が増えれば、その分危険も増します。
人口の少ない地域に住んでいる場合は、他の住人とのコミュニケーションを増やすことが重要です。
高齢になって家を出る機会が減っていたり、住人同士会う機会が減ることは、防犯上のリスクにつながります。
さらに、こういった場所では、比較的大きな住宅に一人で住んでいるということも珍しくありません。
使っていない部屋が増えたり、家周りの手入れにも手が回らないこともあります。気が付けば狙われやすい家になってしまっているかもしれません。
若い世代が頻繁に会いに行くことが難しい場合も、行政や民間のサービスを頼ることもできます。また、高齢の家族と防犯について話し合うだけでも違います。
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同居家族の留守中も危険
都市近郊で家族で暮らしている場合にも、注意することがあります。それは、昼間の防犯です。
空き巣が狙うのは、通勤や通学で住人が家を空けている時間です。その時に高齢者だけが残っている場合、無人であるよりも危険が増します。
全員が留守にしていれば物の被害だけで済みますが、人に危害が及ぶことになる可能性があるからです。また、初めから強盗として侵入される事件も起きています。
基本の防犯対策をしっかりと
玄関ドアも施錠を
日中、在宅中であっても玄関には鍵をかけましょう。
夏場になると、田舎では玄関も開け放して風を通すことがありますが、防犯上は非常に危険な行為です。勝手口も同様です。
近年では人口の少ない地域でも侵入窃盗の被害が増えています。近所の住民同士、自由に他人の家を行き来できた時代とは、変わってきているのです。
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戸建てや1階は窓に注意
開け放しが一番危険
換気のために窓を開ける際は、人が入れない格子が付いている窓や、高い場所にある小さな窓に限ってください。
大きな窓を開ける場合は、ストッパーや補助錠などを利用して人が入れない狭さにしておきましょう。
また、一度にあちこちの窓を開けることも控えてください。
特に、平屋や1階が広い戸建てに少ない人数で住んでいる場合が危険です。無人になっている部屋では侵入を許すことになりますし、多くの窓を開けることで閉め忘れる可能性もあります。
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防犯グッズやセンサーも取り入れて
窓ガラスに貼る防犯フィルムは、ガラスを破られたときに時間を稼ぐ効果があります。
侵入犯の多くは、手早く犯行を済ませようと考えます。時間が長くなれば発覚の危険が増すからです。
ガラスがなかなか割れなければ侵入をあきらめるかもしれませんし、音に気付いて通報することができるかもしれません。
ガラスを割られた後、窓を開けられないためには、二重ロックにしておくことも大切です。生活には少し不便かもしれませんが、危険を減らすことはできます。
窓の開閉や振動を検知するセンサーを取り付けておくことも、同様の効果があります。
センサーが検知した時に音や光が鳴るタイプでは、犯人への威嚇や近隣への注意喚起にもなります。
また、スマートホンなどに通知が届けば、自宅にいなくても異変に気付くことができます。就寝中など、在宅時には避難や通報のために時間を稼ぐことができます。
不審者や不審車両を見かけたら
空き巣はターゲットを決めるために最低でも一回は下見を行うとされています。被害に遭わないためには、この下見の段階でも予防が可能です。
同じような条件の住宅地で被害に差が出るのが近所の声掛けです。実際に逮捕された窃盗犯は、「近所の人に顔を見られた」「声を掛けられた」という理由で、ターゲットを変更したと供述します。
簡単にできる対策は、チラシ配りや宅配の業者など、住人ではない人を見かけたら挨拶をすること。
そして、見慣れない人がいたことを近所で話題に出すことです。
近隣でのコミュニケーションが活発であるほど、空き巣などの侵入窃盗犯は、その地域を敬遠する傾向にあります。いつ、だれに見られて、どこで話題に出されるかわからないからです。
また、不審に思うことがあれば、警察へ情報提供を行うことが大切です。
110番は緊急性が高い場合に限りますが、「#9110」や最寄りの警察署の代表番号へ連絡しましょう。不安な場合はパトロールを頼んでも構いませんし、匿名での情報提供でも問題ありません。
おや?と思ったことを放置しないことです。
被害に遭ってしまった場合は
就寝中などに忍び込まれたことが分かった場合は、逃げることを第一に考えてください。逃げられない場合は、鍵のかかる部屋に隠れましょう。
もしもの時を考えて、携帯電話は手元に置いておくことや、緊急番号へ簡単に掛けられるように設定しておくことも重要です。
帰宅したときに侵入された形跡に気が付いた場合は、家の中に入らないようにしましょう。犯人と会ってしまうことを避けるためです。
通報は身の安全が確保できた後、なるべく早く行いましょう。
住所や状況を伝えなければいけないと思いがちですが、実際には声を出すと危険な場合もあります。恐怖を感じていれば、正しく伝える自信がないという方もいることでしょう。
そういった場合は、断片的な情報でも構いませんし、通話状態にしておいて周りの状況を音声として伝えるのでも良いそうです。
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本記事では、
防犯コンサルタントで元警視庁公安捜査官の松丸俊彦さんに
アドバイスをいただきました。
松丸さんのX(旧Twitter)では、
防犯に役立つ情報が更新されています。
ぜひ、参考になさってください。
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普段と同じように外出して、いつもどおり自宅に帰ってみたら、玄関の鍵が壊されていた…。空き巣に入られたと気づいたときに、どのように行動すべきか解説します。
目次 1 はじめに2 成功例: AIが見抜いた深夜の不審者2.1 事例2.2 教訓3 失敗例: 猫が引き起こした誤作動の末に…3.1 事例3.2 教訓4 ユニークな防犯アイデア: 「家にいるふり作戦」4.1 事例4.2 教訓5 古典的な防犯も忘れずに5.1 事例5.2 教訓6 未来のホームセキュリティ: これからの防犯技術6.1 事例6.2 教訓7 まとめ はじめに 近年、ホームセキュリティの技術 […]