想像したくないことを、あえて想像してみてください。
深夜2時。寝室で眠っていたあなたは、1階から聞こえた「ガシャン」という音で目を覚まします。
ガラスが割れたような音。続いて、複数の足音——。
このとき、あなたはどう動くのが正解でしょうか。「確認しに行く」でしょうか。「大声を出す」でしょうか。
かつての空き巣は、住人との鉢合わせを避けるため「留守」を狙うのが常識でした。
しかしトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)による一連の強盗事件では、住人が在宅している深夜に、窓を破って押し入る手口が繰り返し報告されています。
これまでの記事で、標的が「名簿」で選ばれ、「下見」で絞り込まれる流れをお伝えしてきました。
シリーズ最終回の今回は、それでも「来てしまった夜」にどう動くべきか——警察や元刑事が公開している推奨行動をもとに、時系列でシミュレーションします。
「まさか、普通の住宅が狙われるなんて――」 最近、ニュースで“闇バイト”や“トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)”による強盗事件を目にする機会が増えました。しかも、狙われているのは豪邸だけではありません。 実際には、 高[…]
強盗や特殊詐欺の被害に遭った方が、口を揃えて言う言葉があります。 「どうして、うちだったんでしょうか」 豪邸でもない、有名人でもない、ごく普通の家。それなのに狙われた——。 この疑問には、はっきりした答えがあります。 […]
なぜ「在宅中」に来るのか
そもそも、なぜわざわざ人がいる家に入るのか。
報道や警察の分析で指摘されているのは、彼らの目的が「家の金品」ではなく「住人に出させる金品」だという点です。
金庫の場所も、キャッシュカードの暗証番号も、家中を探すより住人に聞いた方が早い——。
だから在宅中を狙う。しかも実行役は闇バイトで集められた、犯罪慣れしていない人物であることが多く、計画性がない分、現場で何をするか予測できない危うさがあります。
この前提が、これからお伝えする行動原則のすべてにつながります。
大原則: 「戦わない」。例外はありません
最初に、すべての行動の土台になる原則です。
犯人と対峙しない。抵抗しない。制圧を試みない。
格闘技の経験があっても、バットが手元にあっても、です。
相手は一人とは限らず、ハンマーやバールなど凶器を持っていることが多く、こちらの抵抗で逆上する危険があります。
警備会社や防犯の専門家も「相手を刺激せず、命を守る行動を最優先に」と繰り返し呼びかけています。
守るべきは財産ではなく命。お金は取り返せますが、命は取り返せません。
シミュレーション: 深夜、その音がしたら
STEP 1: 確認しに行かない
物音の正体を確かめたくなるのが人情です。

しかし「不審な物音を一人で確認しに行く」のは、犯人との鉢合わせ——最悪の事態に自分から向かう行動です。
警察も「不審な影や音を感じたら、ためらわず110番を」と呼びかけています。「気のせいかもしれないのに通報していいの?」と思うかもしれませんが、空振りの通報を警察は責めません。
STEP 2: スマホを持って、外へ逃げる。無理なら「鍵のかかる部屋」へ
元刑事が推奨する行動はシンプルです——「スマホを持って、即逃げる」。
玄関や勝手口から安全に外に出られるなら、家から離れて近所やコンビニなど人のいる場所へ。
外への経路が犯人と重なるなら、鍵やカギ代わりになるもので閉じこもれる部屋(トイレ、浴室、鍵付きの寝室)に入り、ドアから離れて身を低くします。
このとき手元にスマホがあるかどうかが生死を分けます。
「寝るとき، スマホは枕元」を家族全員の習慣にしてください。

STEP 3: 110番——まず「住所」から
通報がつながったら、聞かれる前に住所から伝えましょう。
万一途中で電話が切れても、場所さえ伝われば警察は動けます。
「強盗が入った」「家の中にいる」「自分は2階のトイレ」と、短く状況を続けます。
声を出すと犯人に気づかれる状況なら、無理に話す必要はありません。
音声での通報が難しい人のために、警察庁はチャット形式で通報できる「110番アプリシステム」も用意しています。
平時に家族のスマホに入れて、使い方を確認しておくと安心材料になります。

STEP 4: 犯人が去っても、追わない・触らない
物音が消えても、すぐに安全確認に動かないでください。
犯人が複数で、まだ屋内に残っている可能性があります。
警察の到着を待ち、逃げた犯人を追いかけない、現場のものに触らない(証拠保全)が鉄則です。

「その夜」を迎えないために、今夜からできること
シミュレーションをしておく一方で、そもそも選ばれない・入られないための備えも並行しましょう。
警察庁の資料に基づき自治体が呼びかけている対策は、次のとおりです。
- 在宅中も、就寝中も、必ず施錠する(「いるから大丈夫」が通用しないのがトクリュウ型です)
- 窓に補助錠や防犯フィルムを。侵入に時間がかかる窓は、それだけで抑止力になります
- 来訪者にはドアを開けず、インターホンやドアスコープ越しに対応する
- 電話で家族構成・資産・在宅状況を聞かれても答えない(探りの電話は「名簿」の材料になります)
- 自宅に必要以上の現金を置かない
- 家族で「夜に物音がしたときの動き方」を一度だけでも話し合っておく
命を守るのは「時間」と「音」
最後に、今回のシミュレーションを貫く本質をお伝えします。
STEP1〜4がすべて成立する条件は、「侵入にできるだけ早く気づくこと」です。
気づくのが早いほど、逃げる時間、閉じこもる時間、通報する時間が生まれます。
窓やドアの開閉センサーがあれば、ガラスが破られ窓が開いたその瞬間に警報が鳴り、スマホに通知が届く。
大音量の警報は家族を起こすと同時に、「気づかれた」と犯人に知らせて犯行を躊躇させます。
実際、警察が服役中の侵入窃盗犯に行った調査でも、犯人が嫌うのは「音・光・時間」、そしてセンサーや防犯カメラの存在だと繰り返し示されています。
戦わずに家族を守る方法は、「早く気づいて、時間を稼ぎ、警察を呼ぶ」こと。
その最初の一歩を人間の耳に頼らず機械に任せられるのが、センサーと防犯カメラです。

最悪の夜のシミュレーションとあわせて、「そもそも気づける家」への備えも検討してみてください。
まとめ
- トクリュウ型強盗は「在宅中」に来ることがある。目的は住人に出させる金品
- 大原則は「戦わない」。抵抗・制圧・確認はすべてNG
- 動き方は「スマホを持って外へ」→無理なら「鍵のかかる部屋」→「住所から110番」
- 在宅中も施錠、窓の補強、電話で答えない、現金を置かない——今夜からできる備えを
- すべての前提は「早く気づく」こと。センサーと警報が、逃げて通報する時間を作る
この記事が役に立つ夜が、来ないことを願っています。
でも、もし来たら——思い出すのは一つだけで構いません。
「戦わない。スマホを持って、逃げる」。
家族にも、今夜伝えてください。





