1. 「まさかうちの古い車が…」——そんな時代が来ている
車の盗難といえば、最新の高級SUVが狙われるイメージを持つ人が多いだろう。
だが今、警察が警戒を強めているのは、「旧型」ランドクルーザープラドや30系アルファードといった“ひと昔前の人気車”だ。
警視庁は、最近の盗難事件の特徴として電子的な手口の巧妙化を指摘し、「鍵を閉めていても盗まれる」ケースに注意を呼びかけている。
さらに、警察庁が公開した資料「STOP!自動車盗難」では、具体的に 150系ランドクルーザープラド(TRJ150W/GDJ150W等)や30系アルファード(AYH30W/AGH30W等) が被害の多い型式として挙げられた。
つまり今、狙われているのは“最新モデル”ではなく、“一世代前の大人気モデル”。
言い換えれば、「まだ乗っている人が多い=犯人にとって“豊作の市場”」になってしまっているのだ。
2. 鍵を閉めても盗まれる。進化する“CANインベーダー”
旧型車が狙われ始めた背景には、盗難手口の進化がある。
従来のようにドアをこじ開けたり、鍵穴を壊す時代は終わった。
今の犯人は、車の“頭脳”に直接侵入する。
■CANインベーダーとは
CAN(Controller Area Network)とは、車内のコンピュータ同士をつなぐ通信システム。
このネットワークに専用機器を接続して、電子制御を乗っ取り、ドアの解錠やエンジン始動を行う手口だ。
驚くべきはそのスピード。
防犯カメラに映った犯行の多くは、わずか1〜3分で完了している。
つまり、あなたがテレビを見ている間に愛車は消える。
音も立てず、ドアを壊さず、跡も残さず——プロの仕事だ。
3. なぜ旧型が狙われるのか?
「新しい車のほうが電子制御が複雑で、セキュリティも高い。だから古いモデルのほうが“攻略しやすい”。」
——これが犯人の本音だ。
一世代前の車は、当時の技術では十分に強固だったセキュリティも、今となっては古い暗号方式や通信プロトコルを採用していることが多い。
つまり、最新手口には無防備なのだ。

さらに、ランドクルーザーやアルファードといった車は中古市場でも需要が高く、海外輸出ルートでも高値で取引される。
「盗みやすく、売りやすい」——この2条件を満たすため、犯人にとっては“黄金のターゲット”になってしまった。
4. 被害は都市部だけではない。地方にも拡大中
車盗難は「名古屋・埼玉・千葉」など都市部でのイメージが強いが、最近は地方でも同様の手口が確認されている。
警察庁の統計では、2025年に入ってから全国の盗難件数が前年同期比で増加しており、愛知県・茨城県・大阪府のほか、富山県や香川県などでも高級車被害が報告されている。
この傾向は、「組織的な犯行グループが地方にも進出している」ことを示している。
都市の防犯体制が強化されると、犯人は“警備の手薄な地域”に移動する。
つまり、「うちは田舎だから大丈夫」も、もはや通用しない。
5. あなたの車も「次のターゲット」かもしれない
警察が警告する「旧型モデル」以外にも、共通する特徴がある。
| 狙われやすい車 | 理由 |
| 人気車種(SUV・ミニバン) | 中古市場で需要が高い |
| 5〜10年前のモデル | セキュリティが旧式でハッキングしやすい |
| 屋外駐車(特に街灯が少ない場所) | 犯行時に人目につきにくい |
| 防犯装置が見えない車 | 犯人から「時間がかからない」と判断される |
犯人は「見えない家」ではなく「見えないリスク」を好む。
防犯装置があるかどうか分からない家より、「堂々と防犯カメラがある家」「ライトがすぐ点く家」の方が圧倒的に狙われにくい。
6. 今からできる“旧型オーナーの生存戦略”
🔒 ①物理的ロックを使う
ハンドルロック・タイヤロックなど、昔ながらの防犯グッズは今でも有効。
犯人が「解除に時間がかかる」と感じるだけで、狙われる確率は下がる。
📶 ②電波遮断ケースでスマートキーを守る
リレーアタック対策に効果的。
旧型でもスマートキーを使う車は多く、玄関にキーを置きっぱなしにするのは危険。
💡 ③「見せる防犯」を徹底する
防犯カメラ・人感センサーライト・ステッカーを設置。
“やる気を削ぐ”演出が最もコスパの高い防御策。
🛰 ④ 盗難追跡ができるGPSを搭載
最近は月数百円のサブスク型GPSも登場。
盗まれた後の「位置追跡」が可能になるだけで、心理的にも安心感が違う。
7. 警視庁の警告が意味するもの
警視庁が「旧型車に注意」と発信するというのは、単なる警戒喚起ではない。
これはつまり、“被害対象が拡大している”ということだ。
以前は「高級新型車オーナーだけが警戒すべき」だった。
しかし今は、「一般家庭の車」「数年前の人気モデル」も狙われる。
これは、セキュリティと犯罪技術の“いたちごっこ”が新たな段階に入ったということでもある。
そして、この傾向は今後も続くとみられている。
理由は簡単。車の電子化が進むほど、侵入経路も電子化されるからだ。
8. まとめ:「旧型=油断」ではなく「旧型=要注意」
もしあなたの車が、
- 5年以上前のモデル
- スマートキー搭載車
- 人気SUVやミニバン
この条件に当てはまるなら、「自分は大丈夫」ではなく「次は自分かもしれない」と考えてほしい。
警視庁の警告は、被害者を増やさないための“先制防御のサイン”だ。
セキュリティの新旧にかかわらず、「見せる防犯」「反応する防犯」「家族で守る防犯」がこれからのスタンダードになる。
あなたの車は、“古いからこそ守る価値がある”。
「まだ動く」その愛車を、闇夜に消さないために。
今日から、もう一度、鍵を握りしめてほしい。




