最近よく聞く、車の盗難事件。ニュースでもよく取り上げられていますよね。
一時期に比べると減っているのですが、手口はより巧妙に悪質になっています。
車は高価なものであると同時に、日常生活に欠かせないという方も多いはず。
車の盗難がいつどこで起きているのか、警察庁のデータをもとに考えます。
知っておきたい! 「車の盗難データ」
盗まれやすい地域ってあるの?
あります。
これは、令和5年の車の盗難件数のランキングです。
千葉県・愛知県・埼玉県・茨城県
グラフを見れば、上位4県が群を抜いて多発しているのが分かります。
続く神奈川県、大阪府でも他の県と比べるとやや多め。
これより下位になると、件数はぐっと下がります。上位の県がいかに多いかが分かります。
こう見ると関東圏、愛知、大阪に分布しているため、人口や車の台数に関係していそうですよね。
車の保有台数が最も多いのは、愛知県。次いで、東京、埼玉、神奈川と続きます。
盗難上位に出てくる県もありますが、注目したいのは東京都。
保有台数では全国2位ですが、盗難件数を見ると190台。1位の千葉県と比べると4分の1です。
ということは、車の台数が多いことだけが原因ではないようです。
理由は密輸ルートが確立されているから
実はこの上位の県には共通した別の理由があるんです。
それは、密輸ルート。
盗難車の多くは、ヤードと呼ばれる作業場で解体され、部品となって海外へ輸出されます。
ヤードは車を補完するため、ある程度の広さが必要です。そして、輸出できる港に近いことも条件の一つ。
解体ルートと輸出ルートが確立してしまっている地域が、重点的に狙われているのです。
実際に千葉県では多くのヤードが確認され、摘発が進んでいます。
盗まれやすい車種は?
台数では「トヨタ:ランドクルーザー」
こちらは、車名別の盗難台数をグラフにしたものです。
※警察庁:「自動車盗難等の発生状況等について」(令和7年3月)をもとに作成
盗難台数が最も多いのは、トヨタのランドクルーザーです。
他の車種に比べても多いのですが、前年と比べると1.5倍ほどに増えました。
今一番、狙われていると言えそうです。
また、ランキングのほとんどがトヨタ車である、というところも注目ポイント。
都道府県別で「愛知県」が上位に挙がっていましたよね。
愛知県で盗難が多い理由の一つは、トヨタ車が多いからということも含まれています。
製造ルートがあることが、解体・密輸ルートの確立も容易にしてしまっているのです。
保有台数における盗難率では「トヨタ:レクサスLX」
もう一つ、上のグラフに多いのは「レクサス」ですよね。
とはいえ台数で見れば、ランドクルーザーほどではないように見えます。
ところが、保有台数千台辺りの盗難台数が最も高いのが「レクサスLX」なんです。
※警察庁:「自動車盗難等の発生状況等について」(令和7年3月)をもとに作成
ハイゼット、キャリイは保有台数が公表されていないため、省いています。
これは、同年の自動車保有車両数から割り出されたもの。
レクサスLXは、盗まれた台数は少なく見えますが、狙われやすい車種の一つです。
理由は海外で人気があること、修理が容易なこと
これらの車が盗まれやすい理由の一つは、人気があることです。
そもそも日本車は性能がよく丈夫で長持ちすることで有名です。
そのため、新車・中古車共に海外にも多く輸出されています。
みなさんも、外国の映像に日本車が映っているところを見たことがありませんか。
人気があって多くのユーザーがいるということは、メンテナンスも必要ということ。
そういったメーカーや車種は、現地にも修理工場があり部品の調達が容易です。
裏を返せば、修理が容易であることも特定のメーカー・車種の需要が高まる一因。
人気がある、需要がある車種は高額で多く売ることが可能です。
こうして狙われやすい車種の傾向が生まれているのです。
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盗まれやすい時間や場所は?
夜中の0時~4時、戸建て住宅の駐車場
これは、車の盗難が起きた時間の分布です。
夜中、0時~4時の間に集中しているのが分かりますね。
また、こちらは盗難が起きた場所を示したものです。
最も多いのが住宅の駐車場から、というもの。
中でも、戸建て住宅での被害はその半数以上を占めます。
理由は人目に付きにくく、車を持ち出しやすいから
住人が帰宅し、寝静まったころ。
暗く、人目に付きにくい時間が最も狙われています。
朝起きて、出かけようと思ったら車が消えていた。被害に遭われた方の声としてもよく聞くケースです。
集合住宅のような機械式で上げ下げが必要な駐車場では、簡単に車を出すことができません。
また、人の目も多く、監視カメラが取り付けられていることもあります。
反対に、戸建て住宅では多くが路面に接しているため、すぐにその場を離れることが可能です。
個人ではそこまでセキュリティを意識していない家庭も多く、盗みやすいのです。
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覚えておきたい! 愛車を守る基本の「き」
狙われやすい地域に住んでいるからといって、引っ越すわけにはかないもの。
また、自分は該当地域ではないから大丈夫、と考えるのも危険です。
確かに、先に挙げた地域では環境が整っていることから、盗難が多発しています。
それは同時に、監視や摘発の動きも高まっているということ。
犯罪手口は常に変化していきます。
同じ理由で人気の車種がいつ変わるかは分かりません。
リストの中には高級車や大型車だけではなく軽乗用車も含まれます。
車はパーツのみや金属そのものだけでも、価値のあるものです。
今は狙われていないから大丈夫、とは言い切れないのが現実。
大切なのはしっかり対策をすることです。
防犯対策は、どの犯罪の場合でも大きく分けて3つあります。
- 狙われない
- 被害に遭わない
- いざというときの正しい対応
それぞれ、車両盗難に当てはめて見ていきましょう。
狙われない対策
まず何よりも大事なのは「狙われないこと」です。
例えば、夜間が狙われているのは、人目につかないから。
つまり「盗みやすい」環境があることが一番危険だと覚えておいてください。
駐車場が暗すぎたり、忍び込んだ音や気配に気が付きにくいなら、要注意です。
ライト・監視カメラ・警報装置などが有効
自宅の駐車場なら
- センサーライトをつける
- 駐車場の入り口にゲートを設ける
- 防犯砂利を敷く
などの対策が有効です。
また、外出先で駐車する場合も、
- 近くにライトがある
- 防犯カメラがある
- 人通りが多く、見通しが良い
などの条件で選ぶことが大事です。
車の盗難では、下見が重要な役割を果たします。それは、単なる空き巣より「持って逃げる」のが難しいから。
いかに簡単に盗めるかを、窃盗グループは調べています。
下見の段階で「この家の車は盗みにくそうだな」と思わせることが重要。
空き巣の対策でも同じことが言われますが、駐車場や庭を整理整頓しておくことも大事です。
人の目がいつでもある、防犯意識が高いと思わせること。
まず何よりも、犯行のターゲットにならないための対策をしっかり行いましょう。
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被害に遭わない対策
二つ目は被害に遭わないことです。
車は言うまでもなく大きな物体です。
レッカーなどで強引に盗まれる場合もありますが、どちらにしてもその場から動かせなければ盗めません。
エンジンがかからない、車が動かない仕組みが有効
ドアを開けられないこと、エンジンをかけられないこと、つまり、キーのロックを解除されないことは非常に重要です。
実は、盗難に遭った車の多くはロックをしている状態で盗まれています。
これはスマートキーの信号をハッキングする手口が増えているためです。
そのため、ハンドルやタイヤのホイールをロックしておくことも有効。
使用頻度の低い車なら、物理的なロックを設置しておくことも考えましょう。
防犯カメラや防犯ブザーなどがあれば、敷地内への人の侵入や、車の動きをいち早く知ることができます。
迅速な対応
最後は、万が一盗まれた後のことを考えておくこと。
犯罪に巻き込まれるなんて、考えたくもないですよね。縁起が悪いから、そんなことは考えない、という方もいるかも。
ですが、万が一を考えることが、防犯の最も重要な部分でもあるんです。
GPSの設置などが有効
車の盗難では、24時間がカギといわれています。
なるべく早く、被害に遭った車を発見しなければ、解体されてしまう可能性が高まるからです。
そのための対策として、簡単には取り外せない場所にGPSを設置するのがおすすめ。
スマホやパソコンですぐに調べられるように、あらかじめ操作を覚えておくことも重要です。
まとめ
いかがでしたか?
盗難されやすいのは「密輸ルート」が確立されている地域。
そして、海外で人気のメーカー・車種が狙われています。
また、深夜に戸建て住宅での被害が多くなっていましたね。
データには例外もありますが、大きな傾向はつかめるものです。
犯罪の手口は日々進化していきます。
最新の情報から、しっかり対策を行いましょう。
本記事では、
防犯コンサルタントで元警視庁公安捜査官の松丸俊彦さんに
アドバイスをいただきました。
松丸さんのX(旧Twitter)では、
防犯に役立つ情報が更新されています。
ぜひ、参考になさってください。
目次 1 盗難は“物”だけでは終わらない2 盗まれた後の“現実”は想像以上に重い3 仕事や生活が狂う現実4 “取り戻せない価値”が奪われる5 盗難“されない”環境をつくる5つの視点5.0.1 ① 視覚的防犯:見えるカメラ、光るライト、威圧感のあるステッカー5.0.2 ② 時間を奪う物理ロック5.0.3 ③ スマートセキュリティで通知+追跡5.0.4 ④ 電波遮断でスマートキーのリレーアタック対策5 […]
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