車の盗難は“他人事”ではない
「え?車が……ない?」
それはある月曜日の朝。埼玉県内のとある住宅街。
会社へ向かうために玄関を出た30代男性が目にしたのは、昨日まで停めていたはずのランドクルーザーが消えた駐車場の空白だった。
「鍵はちゃんと閉めていた。防犯カメラもつけていた。それでも盗まれるのか…」
警察に連絡するも、時すでに遅し。
犯行は深夜2時、たった2分足らずで実行され、既に車は県外にすらない可能性が高いという。
このような事例は、今や全国各地で毎日起きている。
そして被害者の共通点は口を揃えてこう言うのだ。
「まさか自分の車が狙われるとは思わなかった」
だが今、あなたの車が「まさに次のターゲット」かもしれない。
しかも、犯人はプロ。バールもピッキングも使わない。
ノートパソコンと受信機だけで、あなたの愛車は音もなく持ち去られてしまう――。
このような被害は、今や全国各地で日常的に起きています。
高級SUVだけでなく、軽自動車や家族向けミニバン、さらには10年以上前の中古車ですら標的にされているのです。
警察庁によると、2024年の自動車盗難被害は6,080件。1日あたり約16台が盗まれている計算になります。
中には、同一犯によって短時間に複数台の連続盗難が発生するケースも確認されています。
「うちは大丈夫」と思っているあなたの車も、明日の朝には跡形もなく消えているかもしれません。
たった1分、音もなく盗まれる時代――最新の盗難手口
昔のように、バールで窓ガラスを割って無理やり盗む時代は終わりました。
今の窃盗団は、IT機器を使って「無音・無傷」で車を奪います。
現在確認されている主な手口を紹介します。
CANインベーダー
近年、急増している手口がこの「CANインベーダー」。車両のバンパー裏などに隠された配線にアクセスし、車の制御系統に侵入。
純正キーを使わずに、ドアの解錠からエンジン始動まで可能にする恐ろしい技術です。
一部の高級車では、盗難防止アラームさえ発動しないまま車両が持ち去られる例が後を絶ちません。
リレーアタック
「スマートキーの電波を中継して盗む」というこの手口も非常に巧妙。
犯人2人が連携し、自宅にあるスマートキーの微弱な信号を特殊機器で増幅・中継。
車の近くにいるもう一人がそれを受け取り、あたかもキーが近くにあるかのように車に錯覚させて解錠・始動させるという方法です。
自宅の玄関やリビングにキーを置いているだけで、夜中に気付かぬうちに愛車が盗まれる可能性があるのです。
キーエミュレータ(通称ゲームボーイ)
ドアハンドルを握った際に発信される微弱な電波からIDを解読し、疑似スペアキーを作成して車を盗む手口。
簡単に車を盗みだすことが可能です。
コードグラバー
スマートキーでロックした際に発信される電波からIDをコピーし、擬似スペアキーを作成して車を盗む手口。
イモビカッター
車の盗難防止システムであるイモビライザーを無効化して車を盗む手口。
イモビライザーのIDを書き換えることでエンジンを始動させて盗みます。
実際の盗難事件に見る“現実の恐怖”
▶ 2024年6月・埼玉県
さいたま市内でトヨタ・ランドクルーザーがわずか3日間で3台連続で盗まれる事件が発生。
すべて住宅地の駐車場に止めていた車両で、深夜〜早朝の間に音もなく持ち去られていた。
▶ 2024年4月・千葉県
防犯カメラの“死角”を突いて侵入した窃盗犯が、バンパーにCANインベーダーを接続する映像がニュースで報道。
たった90秒でエンジンを始動し、無音でその場を去っていった。
▶ 2023年12月・兵庫県
深夜、マンション敷地内で盗まれたレクサスRXが、半日後には関西国際空港近くの輸出コンテナに積まれていた。
すでに海外への輸送準備が完了しており、盗難から密輸までが極めて迅速に行われている現実を浮き彫りにしました。
なぜ、いま“盗難急増”なのか?
その背景には、以下のような理由があります。
🔸海外での日本車人気
中東・アフリカ・東南アジアでは、日本の高品質な中古車が圧倒的に人気。
中でもトヨタやレクサスの大型SUVは“高く売れる”ため、プロの窃盗団が密輸ルートを確立して狙ってくるのです。
🔸反社・闇バイトの拡大
SNSや掲示板では「車を運ぶだけで5万円」などの闇バイト募集が横行。
学生や無職の若者が加担しやすく、犯罪の裾野が広がっている実態があります。
🔸盗んで10分以内に“姿を消す”
犯行からわずか10分以内に、トラックに積み込んで移動 or コンテナに格納されるため、警察が動くころには手遅れというケースも。
盗難=ほぼ回収不可能な構造になっているのです。
窃盗団が嫌がる家・嫌がる車とは?
実は、盗難は「完全に防げない」わけではありません。
重要なのは、手間がかかると犯人に思わせること。
以下は、プロの窃盗団が嫌がる要素です。
✅ 犯行を見られる危険が高い(カメラ・センサー・照明)
✅ 車に“何かが付いている”(車を防犯していると思わせる物など)
✅ 解錠・始動までに“時間がかかりそう”
犯人は数十秒で盗める車を探しています。
たった1つの防犯アイテムでも、盗難リスクを激減させることが可能なのです。
盗まれる前に“止める”――スマート防犯が車を守る時代へ
これまでのカーセキュリティ対策といえば、ハンドルロックや車載アラーム、ダッシュボードのカメラといった物理的・視覚的な手段が中心でした。
しかし近年、プロの窃盗団がCANインベーダーや電波攻撃など、高度なテクノロジーを駆使してくるようになり、こうした従来型の防犯では「まったく反応しないまま盗まれてしまう」ケースが急増しています。
こうした状況を受けて注目されているのが、“スマートカーセキュリティ機器”です。
なぜスマートカーセキュリティ機器が必要なのか?
いまや車両盗難は、音もなく・わずか数分で完了するテクノロジー犯罪。
そのため、「何か起きてから対処する」では遅く、“起きる前に気づいて阻止する”必要があります。
✅ 盗難発生時の追跡
万が一車が移動した場合にも、アプリ上で現在地を追跡し、警察への通報情報を即座に取得可能となります。
✅ エンジン始動を“ブロック”できる機器も
さらに一部のスマートセキュリティ機器では、スマホや専用タグが近くにないとエンジンがかからない、あるいは遠隔で始動をブロックできるなど、“乗り逃げ”そのものを防ぐ機能も搭載されています。
CANインベーダーやリレーアタックで解錠されても、走行できなければ盗難は成立しません。
車両内部の信号が一定条件を満たさないと始動しないため、犯人が操作に詰まり撤退するケースも。
こうした「走らせない仕組み」を持つことで、車両そのものを守る可能性が格段に高まります。
まとめ:明日、あなたの車はそこにあると言えますか?
「盗まれてから考える」では、もう遅い。
いまの車両盗難は、鍵をかけていても、ガレージに停めていても、安心できない時代に突入しています。
しかもこれらの大半は、住宅街やマンション駐車場など“身近な場所”で深夜に発生しているのです。
盗難は“高級車だけ”の話ではありません。
鍵をかけていても、ガレージに停めていても、狙われます。
そして盗まれた車の多くは、二度と戻ってこないのが現実です。
鍵だけでは守れない。だが、走らせなければ盗まれない。
いまの時代、ただ鍵をかけて安心しているだけでは防げません。
だからこそ、リアルタイム通知×GPS追跡×エンジン始動防止という三位一体のスマート機能が、最も現実的で有効な“盗難抑止力”となるのです。